オルゴールのメカニズムと機械式時計のメカニズム…この2つが非常に近いものである事はいろいろなところで書かれていますね。
でも、どのように近いのか、その違いは何なのかを書いているものは意外に少ないような気がしますです、ハイ。
ここでは、そのあたりに触れてみようかと思います。
ただし、私は物理や機械工学などとは縁が無かったもので、表現が適切でない部分があったりわかりにくかったりするかもしれませんが、ご容赦ください。
もしどなたか、適切な表現についてご指導いただけますと、大変有難いです。
また、説明を簡単にするために、オルゴールは単純構造のシリンダーオルゴール、時計も三針の一般的なタイプだと思ってくださいな。
まずは動力から。
これは説明するまでも無いでしょうが、どちらも香箱に収められたゼンマイですね。
そのゼンマイを手動で、あるいは自動巻きの時計であれば錘を使用した巻き上げ機構を使ったりして巻き上げて、その元に戻ろうとする力を利用しています。
ゼンマイの大きさは、その機械に必要な動力によって違いはありますが、基本構造はほとんど同じです。
でも、ゼンマイって要するに螺旋状の鋼のバネですよね。
バネに力を加えて変形させたら、一瞬の内に強い力で元の形状に戻ってしまいます。
もし、ゼンマイの回転をそのままの状態で時計の針やオルゴールのシリンダーに伝えたら……一瞬で時計の針が何周もグルグルまわって止まったり、シリンダーが唸りを上げつつ回転してしまったりしたら…そんなの時計でもオルゴールでもありませんな。。(笑)
ということで、どちらもゼンマイからの動力は制御しなきゃいけません。
そのためには、時計もオルゴールも調速機構が必要です。
まず、香箱からの直接の動力はゼンマイと直結された「香箱車」という歯車の回転で出力されます。
そして、その出力は「二番車」と呼ばれる歯車に伝達されます。
この二番車で時計では分針を、オルゴールではシリンダーを動かします。
オルゴールの場合はここまでで動力が取り出せてしまいますが、先ほども書きました通り、ただ力任せに回れば良いというものではないので、さらに歯車があります。
二番車の後には三番車…と続き、時計ならば四番車で秒針を動かします。
ところで、時計の針の回転する速さで理解いただけるかと思いますが、こうして歯車を伝わっていくうちにかなり回転速度は上げられています。
当たり前ですが、秒針は分針の60倍の速度で回転しますからね。
大きな歯車と小さな歯車を張り合わせたような歯車を使い、内周の小さい歯車で動力を受け取り、外周の大きい歯車で出力します。
増速比が非常に高く設計されているのですね。
回転の速度とトルクはトレードオフの関係にありますから、実際に速度を制御する部分ではトルクが小さくなり、小さな力で回転を制御する事が出来るのです
ここまでの所では、本当にオルゴールと時計の仕組みはソックリでしょう?
さて、そうして増速比を上げた歯車の先には、速度調節そのものをする機構があります。
この調節の仕組みが、時計とオルゴールでは全く異なるものになります。
オルゴールでは、二番車を演奏に適したトルクと回転速度にして、それをある程度長時間保つ事が出来れば目的は達成されます。
大抵のオルゴールには、シリンダーや香箱の近くに風車のようなものがあるのはご存知かと思いますが、あのようなエアブレーキなどを(時計で言えば四番車の先に相当するあたりに)取り付け、空気抵抗を利用して回転が速くなり過ぎないように制御しています。
また、多くのオルゴールではエアブレーキ部分に演奏を止める装置をつけていたりしますが、この部分なら小さな力で演奏を止める事が出来るからですね。
ちなみに、オルゴールでは増速比を上げる歯車の部分からエアブレーキまでをまとめて、「ガバナ」と呼びます。
(ガバナは調速機構一般に使われる言葉で、オルゴールの専門用語ではありませんが)
時計の場合はそう簡単にはいきませんね。
オルゴールなら30秒〜1分あれば一曲演奏できますが、時計が1分で止まってしまっては全く役に立ちません。
それだけではなく、回転速度を一定に保って正確に時を刻んでくれなければ、まるで使い物にならずに困ってしまいます。
そこで時計では脱進器や振り子を使って速度調節を行います。
簡単に説明しますと、脱進器というのは振り子の往復運動と歯車の回転との仲立ちをするシステムです。
振り子の法則の通り、振り子は正確に同じ時間での往復運動を繰り返します。
その性質を利用して歯車を制御する仕組みなんですね。
乱暴な言い方ですが、時計の中には音楽で使われるメトロノームが入っていると思っていただければイメージしやすいかも知れません。
機械式の時計のカチコチという音は、この脱進器が振り子に同期して回転速度を制御するときに発生する音なのです。
さて、こうして動力源から制御方法までを見てみると、
1:それぞれの機械の用途に合わせて速度調節機構が違う事
2:動かしているものが時計の針かシリンダーかということ
基本的な違いはこの2点だけということになります。
オルゴールのルーツが時計技術から生まれて来たのも当然と頷けちゃいますね。
元々は時計技術者の願望、小さな懐中時計の時刻を知らせる音を効率よく出したいと望んだ事がオルゴールが生まれるキッカケとなったのでしょう。
時計の加工技術や調速技術を上手に応用して、さらに櫛歯による演奏を考案することにより、今日まで続くオルゴールの基礎が完成したのでしょうね。